正確なことは覚えていないが、
小学生のとき、
音楽の時間に、リコーダーの実技試験があった。

先生が言われるには
上位者数名を選び、ユニットを組んで活動する
ということだったと思う。

生徒全員の中で行われた、試験の結果について
先生は、私を入選としながらも
ユニットからは除外した。

そのことについて、
正義感の強い女子生徒からは
先生のそのようなやり方はよくない
とか
Zekooがかわいそうだという声が上がったが…

当の私自身は
そもそも先生が趣味でやっている
課外活動などに関わりたくなかったので
ヤッホーと内心喜んでいたのである。

ただ、大人になって思ったこととしては
どうしてその先生は
他の生徒から批判されることがわかりきっているのに
そんなやり方をしたのかということ。
自身が採点者なのであれば、
最初から私の点数を低くして、選外とすれば良かったのではないか。

しかし実際には
先生は、そのような道を選択されていない。

一般に、人が一見すると容易な道を選ばない場合
単にそれをしなかったのではなく
できなかった理由がどこかに存在するはずなのである。

おそらくは
音楽の専門家としての矜持が邪魔をしたのだろうか。

それとも
先生自身も孤独であり
大切なもののそばにいる時
嘘をつきたくはなかったのかとさえ思う。

ただ、
当時の浅はかな自分には
いずれも思いもよらぬことで
そもそも音楽は学校で教わる程度のものでしかなく
それほど大切と呼べる存在ではなかった。

少なくともその時はそう思っていた。

あれから、
何十年という時が流れ
私が本気で音楽を始めてみようと思ったのは
ほんの2年前のことである。

それまでの長い間
それほど近くにいてくれるものとも思っていなかったものが
結果的に
もっと大切にしなくてはいけないと
思う時が来てしまう。

小学生の当時は、何かにつけて対立していた先生ではあったが
今になってみると
私はその先生から、何かとても大切なものを
気づかずに受け取っていたように思う。