レセプター解説編〔白い光の謎〕前編

これまで掲載してきたノベライズ作品「レセプター」の解説をはじめました。
今回と次回において、「レセプターⅠ」最終章で描かれた、「白い光の謎」に迫ってゆきます。

 

1. レセプターとは何か?

まず最初の疑問はここですよね。

レセプターって、結局なんなのか。

レイが開発した量子意識レセプター(QCR)は、
ざっくり言うと、
人の心をモノである量子で検出するために
「量子の共鳴を人工的に作る装置」です。

難しそうに聞こえますが、
イメージとしてはこんな感じです。

装置を起動すると、
接続先の状態がスクリーンに表示されます。

数値データだけでなく、
ぼんやりした映像や色の揺れとして。

輪郭のはっきりしない光。
かすかな明滅。
色の変化。

それと同時に、
波形データも出る。

そこから、喜びや緊張、不安といった
「感情の傾向」が読み取れる――
それがレセプターの仕組みです。

ここで重要なのは、
レイはこれを“成功した”と信じていること。

彼女は確かに観測した。
応答もあった。

でも、その結果は他の研究者には再現できなかった。

装置はある。
理論も破綻していない。

それなのに、決定的な証明だけが共有できない。

再現しようとすると沈黙する。
ログを確認すると痕跡が残らない。

レイは嘘をついていません。
それでも彼女は、基礎実験の結果を信じ続けました。

周囲に認められなくても、
一人でデータを取り、解析を重ね、
黙々と改良を続ける。

そうして、レセプターはついに完成へと至ります。

物語は、そこから動き始めます。

 

2. なぜラキの危機を感じたのか?

レセプターは完成した。
研究者として孤立していたレイにとって、それは最後の希望でもありました。

成果は認められない。
それでも彼女は、自分の基礎実験を信じている。

そして彼女は、ある人物を思い出します。

ラキ。

かつて研究を見守ってくれた、古い友人です。

「彼なら、理解してくれるに違いない。」

レイはそう確信し、
完成したばかりのレセプターを起動し、
ラキとの接続を試みます。

そこで表示された波形は、
これまでの基礎実験とは明らかに異なっていました。

光は乱れ、
データは大きく振れ、
感情値は不安定に跳ね上がる。

レイはそこに、
強い不安の兆候を読み取ります。

それが何を意味していたのか。
本当に危機だったのか。

この時点ではまだ分かりません。

けれどレイにとっては、
それで十分でした。

ラキに何かが起きている。
世界を揺るがすような大きな危険が迫っている。

そう感じた瞬間、
彼女の中で迷いは消えます。

行かなければならない。
ラキを助けに。

物語は、ここで一気に動き出します。

 

3. 二人の心が重なったとき、世界はどうなっていたのか

ラキが観測していた計測のわずかなズレ。
それは偶然ではありませんでした。

原因は――
レイがレセプターを作動させたこと。

レイは装置を「測るためのもの」だと考えていました。
けれど実際には、それはラキの世界に触れてもいた。

レセプターが共鳴を起こした瞬間、
ラキの世界に、ごく小さな揺れが生じます。

たとえば、
赤と白が半々で出るはずの測定でも、
赤が何度も続くことはあります。

物理法則は壊れてはいない。
でも、ラキは「おや?」と思う。

その程度の揺らぎ。

やがて回数を重ねれば、
結果は平均化されて、赤と白が半々に近づいていきます。
全体のバランスは崩れません。

けれど、その一瞬だけ、
測定結果は確かに偏る。

ラキが感じた違和感は、
まさにその“続きすぎる偶然”であり
“偶然では説明しきれない現実”でした。

そしてレイは、
自分が生じさせたその揺らぎを、
レセプターを通して「迫る危機」として受け取ってしまう。

世界は壊れていない。

ただ、レセプターは、
思っていたよりも深く世界に触れていた。

それだけのことが、
二人の世界を大きく動かしたのです。

近日中に、続編を掲載予定です。