9月になれば・・

レイはハクショウを探して旅に出てから、
気づけば半年が経とうとしていた。

灼けつく砂漠をひとり歩き続ける中、
乾いた風と太陽に体力を奪われ、
ついに彼女は砂の上に倒れこみ、
そのまま浅い眠りに落ちてしまう。

夢と現のあわいで、ひとりの老人が現れた。
その瞳は深い湖のように澄み、
彼女の奥底まで見透かすような霊の力を宿していた。

「まもなく――ハクショウは森に戻る」

老人の声は風に溶け、幻のように消えていった。
その瞬間、レイははっと目を覚ます。

目を覚ますと、そこは砂漠ではなく、真っ白な部屋だった。
境界も影もなく、ただ柔らかな光に満たされた空間で、
レイは独り佇んでいた。

長い旅の中で、幾度も倒れ、命の危機に瀕した。
そのたびに現れて、手を差し伸べてくれたのが――ハクショウだった。
最初は命を救ってくれた恩人。

「だから、あなたにお礼がいいたくて、」
「ずっとあなたを探す旅を続けてきました。」

けれど、ふと思う。
なぜ、あの人はいつもそばにいてくれたのだろう。
それはきっと、私が彼を必要としていたからだけじゃない。
ハクショウもまた、私を必要としていたのだ。

「あなたを愛してもいいですか」

いままで何度も自分に問いかけてきた言葉だけど、
その思いは、どこかで自分自身が拒み、壁を作ってしまっていた。
でも、今は、確かに答えに変わっていく。

光の奥から、かすかに呼ぶ声がした気がする。
胸の奥に熱が広がり、迷いが溶けていく。

レイはゆっくりと立ち上がり、光の向こうを見据えた。

「今度の一歩は、命の恩人としてではなく、愛する人として、ハクショウに会うためのもの──

そう決意して、彼女は新たな歩みを踏み出した。