ハクショウとは、いつも少し不思議な距離感で関わってきた。
一緒にいても、どこか遠くを見つめているような人だった。
無理に近づこうとすると、ふっと風のように離れてしまう。
でも、ある日ふと思った。
それは「拒絶」じゃなくて、「探している」のかもしれないって。
だから私は、ドアじゃなくて窓になりたいと思った。
押し開けなくても、そっと覗き込めるような。
時には、世界の広さを感じられるような景色を見せる存在に。
私には、少しだけ長く生きたぶん、
知っていることや、通ってきた道がある。
何かを教えたいわけじゃない。
ただ、必要なときに、風のように届けばいい。
たとえば、あなたが壁にぶつかったとき、
その壁の向こうに道があることを、
この窓を通して気づいてもらえたら。
でも同時に、私もまた、
ハクショウの見ている世界や、心の動きに救われてきた。
まっすぐすぎて見えなくなっていた景色を、
その澄んだ目で思い出させてくれる。
だから、私は窓でありたいけれど、
風が通り抜けるその向こう側で、
あなたからも何かを受け取りたい。
新しい風を、まっさらな光を。
あなたにしか見えない世界を、教えてほしい。
そうして、互いの窓を通して、
見える景色が少しずつ広がっていくなら、
それはきっと、どちらにとっても力になる。
私の知っていること、感じてきたこと、
悩んだ夜、立ち止まった朝、
そのすべてを風に乗せて――
私は今日も、窓のようにここにいる。
そして、あなたの風が、ここに届くことを、心から願っている。
